伸縮装置に求められる機能のひとつに止水性があります。止水性が高ければ橋梁の寿命も長くなり、ライフサイクルコストも下がるためメリットが多いです。
しかし、その役割を担う止水材はとても痛みやすい部材で、漏水の主な原因でもあります。そのため、できるだけ長く止水材を保てるよう、各メーカーで様々な対策が施されています。
この記事では、伸縮装置の止水材が果たす役割と、止水材の種類について解説しました。
止水材が果たす役割
伸縮装置が設置され始めた当初は、止水材は付いておらず、水はそのまま下に滴っていました。しかし、桁下に流れた水はいずれ橋を支える支承に辿り着きます。
そして、支承にサビができ痛み始めて、やがて支承としての役割を果たせなくなってしまうのです。そのため、伸縮装置から水が漏れないよう止水性が求められるようになりました。
止水材の耐用年数
東北エリアで行われた調査によると、補修が必要とされた伸縮装置の損傷内容は次の通りでした。
27%が止水機能の損傷と区別されていました。つまり、止水材はとても壊れやすいと言えます。これは、止水材の多くがゴムを使っており、劣化が早いため損傷もしやすいのです。
加えて、伸縮装置の隙間に堆積した砂や雪は、通過する車両によって下に押されます。その結果、止水材に力が加わって脱落するのも大きな要因です。
調査結果では、脱落は平均して6年程度で起こるため、止水材の補修は定期的にしなければいけません。
地覆部の止水対策
地覆部は漏水の原因にもなるため、しっかりと対策する必要があります。対策としてはシール材や地覆ジョイントの設置が行われますが、予算にも大きく影響するので事前に打ち合わせすることが大切です。
詳しくは次の記事にまとめましたのでご覧ください
止水材の種類
伸縮装置に使われる止水材にはいくつか種類があり、具体的には次の4つが挙げられます。
- シール材
- 乾式止水材
- 二次止水材
- ジェラフィン
シール材
シール材は止水材として広く一般的に使用されていて、伸縮装置の設置にも使われています。弾性があり伸縮するので、狭い隙間を埋めるときに役立ちます。
最大のメリットは費用が抑えられる点です。しかし、劣化も早いため定期的な補修が必要で、幅の広い隙間や遊間だと伸縮に耐えられないので使えないデメリットもあります。詳細は次の記事でご覧ください。
≫伸縮装置における目地材の役割|シール材の欠点と補うための方法を解説
乾式止水材
鋼製の伸縮装置(フィンガージョイント)に使われる止水材で、弾性シール材の代わるものとして制作された製品です。
いくつかの層で構成し、発泡ウレタン等を使うことで収縮性を高めることで、伸縮しても高い止水性が保てる特徴があります。詳細は次の記事でまとめていますのでご覧ください。
二次止水材
止水性の高い伸縮装置でも、使用すれば劣化して漏水する可能性はあります。そこで、伸縮装置の下にさらに止水材を儲けることで、桁下に水が漏れないようにするのが二次止水材です。
二重構造にすることで漏水をかなり防止できますが、当然ながら費用は膨らみます。以下の記事で詳しくまとめましたのでご覧ください。
ジェラフィン
ジェラフィンはふたつの液体が混ざったウレタン樹脂のことで、別名「耐圧防水樹脂」と呼びます。
これは補修の際に使用する素材で、これまで大規模な工事が必要だった防水補修作業を格段に短くすることが可能になりました。以下の記事で詳しく解説しています。
≫ジェラフィンとは?【主な特徴と使用例、伸縮装置におけるメリットを解説】
以上です。
止水材は方法によって効果もコストも変わります。そのため、設置する環境と予算を考慮して、どの方法にするか十分に協議することが大切です。