伸縮装置ラインナップ早見表! 橋梁用伸縮装置にお悩みなら、今すぐチェック!

伸縮装置に関する新技術紹介!~ジェラフィンを使った防水補修工法~

このコーナーでは「伸縮装置に関する新技術紹介」と題し、伸縮装置製品だけでなくその周辺技術・製品等をご紹介していきます。

耐圧防水樹脂ジェラフィンによる充填で漏水を止水する新技術に迫る

橋梁用伸縮装置橋と道路のつなぎ目に設置される重要な機器であり、橋梁建設に欠かすことのできない重要な役割を担っています。

公共性の高い架橋は定期点検や補修工事が必須とされますが、経年劣化や輪荷重によるダメージに伴いひび割れなどの欠損が見られることは多々あり、状況に応じて大掛かりな補修工事がなされます。

これまで橋梁用伸縮装置の防水補修工法では規模の大きな取替工を実施していましたが、近年、株式会社エスイーシーが開発した新技術ジェラフィンの出現により、作業は格段に容易となりコストの大幅な削減にも寄与する形となりました。

ジェラフィンとはどのようなものなのか、こちらの記事では従来の防水補修工法との違いについて学んでいきます!

伸縮装置における防水補修の必要性

伸縮装置からの漏水イメージ

橋梁用伸縮装置の大きな役割の一つに高い止水性があります。

高い止水性を確保することは道路環境の安全を保つため重要ですが、伸縮装置は素材等の観点から経年に伴い、止水機能が劣化する傾向が見られます。

橋における漏水はいつか必ず発生する事象であり適宜補修が行われるため、伸縮装置は橋梁付属物の中では比較的修繕サイクルが早いと言えるでしょう。

橋の耐久性や維持管理を行う上で水処理は非常に重要なため、伸縮装置の他、床版や橋桁、橋台など様々な部位で防水対策が取られています。

従来の防水補修工法

橋梁用伸縮装置における従来の防水補修では、大規模な取替工事が行われ作業員の負担や作業時間のかかる工法が取られていました。

手順としては以下のような工程を経ており、施工の際は一般的に4トンユニック車やクレーン車が用いられます。

現地調査
コンクリートカッター車を用いて後打ちコンクリートと舗装の境界部を切断
既設ジョイントの撤去
4tユニック車等を用いて一車線組立品を吊り下ろし新しいジョイントを据付
ジョイントと床版を固定するため溶接して取付け
コンクリートの打設
コンクリートが固まり強度が十分であることを確認して完成

新技術” ジェラフィン“を使った防水補修工法とは

防水補修工といえば取替工が一般的であり、大規模修繕だったところに新たな風を巻き起こしたのは”ジェラフィン”という物質でした。

ジェラフィンとはどのような化合物なのでしょうか。

土木業界を大きく変えるかもしれない新技術についてご紹介します。

ジェラフィンとは

ジェラフィンは別名耐圧防水樹脂と呼ばれており、二種類の液体が混合したウレタン樹脂のことを指します。
二種類の液体は主剤と硬化剤であり、この二液を混合させることで凝固し無色透明の硬化物が出来上がります。

その特徴は耐圧性・防水性・防湿性・防塵性・防蝕性・電気絶縁性・透明性などが挙げられ、また非接着でありながら再融着が可能という点も際立った性質です。
これらの効用を持つジェラフィンですが、活用フィールドは日本社会に大きく影響を与える分野ばかりであり、海洋分野・航空宇宙分野・社会インフラ系分野など幅広くあります。

ジェラフィンの使用例

ジェラフィンは函館に本社を構える株式会社エスイーシーがもつ特許であり、今このウレタン樹脂に大きな注目が集まっています

ジェラフィンは凝固してから透明色になるという極めて珍しい特性を持つことから、深海や宇宙空間での活用を可能にするだけでなく、橋や道路などのインフラにおいても重要な役割を果たすとされています。

例えば海洋分野では海中カメラや深海LEDライト、海底地震計などをジェラフィンで覆うことで耐圧防水の役割を果たし、水深8000メートルの海底でも潰れない性能から海洋発電システムやケーブルといったIoTインフラの保護にも活用できます。
航空宇宙分野では航空機LED翼灯やドローンの防水対策としてジェラフィンが使われ、再利用ロケット部品の着水衝撃保護といったところでも大きな役割を担います。

ジェラフィンにおけるこの新技術は2021年9月に米国特許を取得、その他発明表彰における最高賞文部科学大臣賞や未来創造発明奨励賞など数ある功績を収めています。

橋梁用伸縮装置防水補修の新技術

ジェラフィンの発明は、土木業界においても劇的な変化をもたらしました。

これまで伸縮装置の防水補修は、装置の撤去や据付が行われ大きな負担がありました。
しかし、密着し漏水や腐食を防ぐジェラフィン必要箇所に充填するだけで作業が完了する手軽さから、その作業工程は従来のものと全く異なることが分かります。

また、環境に与える影響や維持管理の容易さなどのメリットも見られ、新技術の普及は今後必然と言えるでしょう。

ジェラフィンの新規性は以下の通りです。

大規模な施工から省力作業へ移行

従来の防水補修では複数名の作業員が連携する取替施工が行われていたが、新技術では既存の装置にジェラフィンを充填するだけで作業が完了する。
遊間19mmの場合、従来では2.8日/10mに要していたところジェラフィンの新技術では0.5日/10mと工期は短縮され、圧縮引っ張りの繰り返しの中で、変形せず長期間安定した防水性を確保できる。

ランニングコストの省力化

ジェラフィンの充填のみで作業が完了する容易さから、それまで必須であった重機・新規伸縮装置の用意、人員確保などの経済的負担が大きく軽減される。
最も注目すべきは技術コストの大幅な違いであり、従来技術の場合取替工に2,664,480円/10mが計上されていたが、新技術コストでは238,250円/10mとなる。
従来技術との比較結果では91.06%の向上が確認できる。

施工性

ジェラフィン施工後、車両の往来や劣化により樹脂の剥離が確認された場合は、再びジェラフィンを充填することで補修が完了する。点検の際は目視や触手で確認が可能。
従来ではカッター工・はつり工・旧ジョイント撤去・据付工・打設工を行うだけでなく、施工時には熟練工が必要だった。
しかしジェラフィン使用の場合、二液を同量混合、攪拌してから該当箇所へ流し込み・充填するだけで施工は完了する。
またその際施工に関して熟練工は不要となるため、経験の少ない若手など誰でも扱える容易さがある。

安全性と環境に与える影響

二種類の液体を混合したジェラフィンは、人体への影響がないことが実証されているため安全性に優れた物質であり、品質とも多様な分野での活用が可能。

【ジェラフィンの成分構造】
・カドミウム及びその他化合物0.00003mg/l以下を含む43種類が各基準値以下を確認
・味・臭気異常がないことを確認

また従来の施工方法では、廃棄物や施工時に排出する熱量など環境へのダメージが少なからずあったが、ジェラフィンを活用することで大型車両を使わず、また交通規制の短縮が実現することから環境に配慮した工事が実現する。

耐久性

2017年11月に行った試験施工(一般国道229号八雲町見市橋、遊間:100㎜)では施工から約3年後の2020年10月の定期点検で伸縮装置からの漏水は見られていない。(中略)

耐久性能試験で耐用年数30年に相当する引張圧縮繰り返し連続11000回をクリアした。(令和3年1月18日~1月19日実施)

NETISより

従来の取替工事と比較すると格段にメリットの多いジェラフィンでの施工

新技術の開発により、土木業界に新たな風が吹いたことは間違いありません。

経済性・施工性・安全性、そして環境に配慮したこの新技術が、橋梁用伸縮装置の防水補修工法としてステータスとなる日はそう遠くないでしょう。

施工中(技術資料より)
施工完了時(技術資料より)

まとめ

ジェラフィンとは二種類の液体を混合し、攪拌することでゼリー状の樹脂に変化し硬化する物質のことでした。

硬化後は無色透明になるという特殊な性質を持ちますが、この透過性の高さに加え耐久性電気絶縁性などの利点から海洋分野や航空宇宙分野、社会インフラにおいて注目され、今後はさらに活躍のフィールドを広げていくことでしょう。

そしてこの度、耐圧防水樹脂充填による橋梁伸縮装置の防水補修工法がNETISへ登録されました! (※NETIS登録番号:HK-210010-A)

橋梁用伸縮装置の防水補修工事はそれまで大掛かりな作業を必要としていましたが、ジェラフィンの出現により補修工は省力化され、コスト・環境面で大きな変化をもたらすことが予想されています。

また、全国の自治体が策定した「橋梁長寿命化修繕計画」において、予防保全の材料として利用が始まっています。

新規性にあふれたジェラフィンは、今後施工場面での活用が大いに期待される”スゴイ技術”なのでした!