伸縮装置の撤去は装置の取替えで必ず行われる作業です。カッターを使ってコンクリートを切断し、工具で破砕することで伸縮装置を取り除いています。
しかし、その作業をする際に振動や騒音が発生するため、周辺地域への影響や橋梁へのダメージが出る可能性が高いです。そのため、撤去における問題を解消できる方法も各メーカーが取り組んでいます。
この記事では、伸縮装置の撤去の流れや問題点を解説しました。合わせて、各メーカーで行われている撤去方法も紹介しましたので参考にご覧ください。
伸縮装置の撤去の流れ
伸縮装置の撤去は、基本的には新しい装置への取替えの際に行われます。ベースとなる撤去の流れとしては以下の通りです。
まずは舗装と後打ちコンクリートの境界線をカッターで切断し、周辺の舗装に影響が出ないようにします。その後、コンクリートブレーカーで後打ちコンクリートを破砕して取り除き、既存の装置を取り付けている鉄筋をガス切断を使い溶断して伸縮装置を取り除く、という流れです。
以下の動画では、実際の撤去の様子を紹介していますのでご覧ください。
撤去における問題点
伸縮装置の撤去作業は、大型の重機や工具、たくさんの作業員によって行われています。そのため、基本的な方法では以下の点が問題として考えられています。
- 環境負荷
- 廃棄物処理
- 作業時間
撤去作業はコンクリートブレーカーなどを使用するため騒音が大きくなります。また、振動の発生や粉じんの飛散、大型の重機を使用するため排気ガスによる環境負荷も大きいです。
加えて、撤去した後に出る既存装置や破砕したコンクリートは、そのままの使用はできないので廃棄物として処理しなくてはいけません。
そして、当日の作業は交通規制を行う必要があります。規制の規模が大きく時間が長くなると人件費などのコストが増す上に、交通量の多い場所では渋滞などの可能性も高くなり利用者にも影響が出てしまうのです。
伸縮装置撤去の方法
撤去作業では様々な問題が発生しますが、現在は各メーカーでその課題を解消するための方法が考えられています。具体的な例としては次の通りです。
- SJS-H工法
- リペアコント工法
SJS-H工法
ワイヤーソーと呼ばれる切断機を使い撤去を行う方法です。コンクリートブレーカーを使用しないので騒音が少なく、振動もかなり低減できます。
これにより夜間でも作業が可能で、交通規制や周辺施設への影響も少なくなります。加えて、床版のコンクリートへの負担も小さくなり、マイクロクラックと呼ばれる小さいひび割れも低減が可能です。
リペアコント工法
伸縮装置のアンカーバーの下に、あらかじめ平らなパイプジャッキを仕込みます。これを撤去の際に水圧を加えて膨張させて亀裂を入れ、装置と周辺のコンクリートをブロック状に取り除く方法です。
コンクリートブレーカーを使わないので振動を軽減でき、はつりによる粉塵も発生しません。また、床版の損傷もなく、作業時間も短くすることができるため、コストや環境の負荷を減らすことができます。
以上です。
伸縮装置は劣化するため、撤去作業は必ず発生します。コストや環境への配慮を長期的な視点で考えることが大切なので、伸縮装置の新設や取替えの際はしっかりと協議しましょう。