伸縮装置の図面には断面図や平面図、位置図などが掲載されています。装置の新設や取替えの際に作成され、関係者の間で正確な情報を伝え合う、という重要な役割を果たしているのが図面です。
この記事では、伸縮装置の図面の掲載内容を紹介し、その内容が何を表しているのかを解説しました。施工で図面を見る際の基礎知識としてご覧ください。
伸縮装置図面の構成要素
上の図は実際の伸縮装置の図面です。掲載されている要素は多くの図面で共通しており、具体的には次の内容が記されています。
- 断面図
- 平面図
- 配置図
- 側面図
ある部分で垂直に切断した面を表すのが断面図で、製品を上から見た図が平面図です。配置図は橋梁と伸縮装置の位置関係を表しており、側面図は橋梁などを真横から見た図になります。
図面の種類
図面の内容は必要に応じて掲載内容が変わります。そのため、図面は次の4つの種類に大きく分類されています。
種類 | 掲載内容 |
---|---|
一般図 | 構造全体の計画を記したもの。 外形だけではなく、周辺の地形や地質の情報も掲載している。 |
一般構造図 | 構造の形式や概略を記したもの。 全体を1枚程度の図面にまとめた一般図に対し、構造を主体に掲載したのが一般構造図である。 |
構造図 | 部材の寸法や製作・組立を記したもの。 使用する鋼板、溶接での部材の組立などを掲載している。 |
詳細図 | 溶接の開先仕上げや機械加工、ボルト類などの複雑な構造を記したもの。 構造図から引き抜き大きく図を掲載している。 |
伸縮装置図面の読み取り方
伸縮装置の図面には様々な記号や数値が記載されています。それぞれに意味があって記されていますが、その中でも特に必要となる項目が以下の4つです。
- 支承の表示と位置
- 遊間と支間長
- 断面図の位置
- 橋台・橋脚の表示
支承の表示と位置
橋桁の収縮やたわみに対応するための部材が支承です。橋台・橋脚と橋桁の間にあり、種類も可動支承・固定支承など複数あります。
- M:可動支承
- F:固定支承
- E:免震支承・水平力分散支承
アルファベットでどの支承を採用しているか判別ができます。また、数字は橋桁の端部からどのあたりに支承があるかを示しています。
なお、支承に関しては以下の記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
遊間と支間長
遊間は橋梁にある継ぎ目の隙間のことで、支間長は支承から支承までの長さを指します。これらは側面図や位置図に掲載されていますが、この数値と支承の位置は伸縮桁長を計算する上でとても重要です。
実際に伸縮した桁の長さを指す
伸縮桁長は単純に数値を足し合わせるものではなく、支承の種類や橋桁の内容によって異なります。詳しくは以下の記事でご覧ください。
断面図の位置
断面図はある箇所で切り落とした場合の見え方を示した図です。伸縮装置自体の断面図の他に、アルファベットと矢印で表示された断面図もあります。
アルファベットは「その位置で切断した」という意味です。また、矢印は「その方向を見た」という意味で、今回の図面では右側に立って左側を見ている断面になります。
橋台・橋脚の表示
人や車が通る橋桁を支えているのが橋台と橋脚です。橋台は橋の始まりと終わりにある柱で、橋脚は中間を支えている柱を指します。
- A:橋台
- P:橋脚
なお、アルファベットの後の数字は「何番目の柱か」を示しており、道路の起点から若い数字を使います。橋台・橋脚も以下の記事で解説していますのでご覧ください。
以上です。
図面には設計者や作業者の間で共通した表現や数値が掲載されています。正確に読み取ることが大切なので、重要な内容は漏らさずチェックするように心がけましょう。