伸縮装置の両端で行う必要のある地覆部分の処理工事では、美観が重視されがちですが、伸縮装置の地覆部分の処理は、橋梁の劣化・漏水を防ぐための部位でもあります。
積算上はあまり登場しないので、これまであまり意識してこなかった方も多いのではないでしょうか?
この記事では、伸縮装置と地覆処理についてご説明します。
止水の観点で考える地覆処理
伸縮装置の地覆部の処理方法は、主に3つあります。
①シール処理を施す
②地覆ジョイントを設置する
③排水装置を設ける
伸縮装置自体の止水構造が非排水型なのか排水型なのかといった仕様によって、端部処理の方法は変化します。
①~③いずれかのみという場合もあれば、①~③の組み合わせで設置されることも。
橋梁によっても、求められている止水性能が異なりますので、設計段階での設計構想に合わせて選択されます。
耐久性や維持管理性を考えると、劣化破損、隙間からの漏水が発生しやすいシール材よりも、地覆ジョイントを設置した方が止水性能がより高いと言えます。
しかし地覆ジョイントは一般的にジョイントへ取り付ける追加部材となるため、別途積算が必要となりますので、予算との兼ね合いでシールのみということも多いようです。
また、シール材はどうしても劣化が早いので、上からカバープレートを設置した方がLCC(ライフサイクルコスト)は長くなります。
なお、地覆ジョイントを設置してもシール処理(または無収縮モルタル、コンクリートの充填)は行いますので、施工が容易になるわけではない点は注意すべきでしょう。
カバープレートとその性能

橋を渡っている際、伸縮装置の端に鉄板が設置されている姿をご覧になったことはありますか?
高欄や地覆部分に設置される鉄板のことを「カバープレート」と呼びます。
主な用途・使用目的は、人や物の落下防止のほか、シールや縁石、伸縮装置端部を保護し劣化を防ぐことです。
特に、歩道部や、遊間が広い場合に使用されることが多いです。
防食性などの観点から、材質はステンレスや、メッキ加工品であることがほとんどです。
カバープレートで注意しなくてはならないのが、地覆の形状にあっているのかどうかです。
地覆の形状については後述しますが、地覆の形状は一定ではなく、橋によっても角度や寸法が異なりますので、きちんとチェックすることが重要です。
カバープレートを失敗すると美観を損なうこともありますので、細心の注意を払って調査・発注を
行うようにしましょう。
地覆の形状・種類について

(一般社団法人セメント協会 ホームページより抜粋)
一口に「地覆」と称していますが、橋梁の「地覆」にも様々な部位・形状があります。
形状は様々ですが、フロリダ型や直壁型と呼ばれる一定の規格のある場合が多いです。
シール処理は高欄や縁石の形に合わせて行うため、事前に図面と照らし合わせ施工前までにどのように処理するのが最適か、考えておくようにしましょう。
また補修の場合の地覆ジョイントの選定は、地覆の形状によっては特殊品を用いなければならないこともありますので、注意しましょう。
まとめ
・地覆処理の方法は複数あり、現場条件や地覆の形状ごとに適切な方法を検討しましょう。
・カバープレートを設置することで美観を高めることができますが、うまく設置できないと逆効果になりますので、調査には細心の注意を払いましょう。