
・どんな伸縮装置を使えばいいのか分からない
・各社の取り扱っている伸縮装置の違いを知りたい
・橋梁や道路に使用されている実例を見たい
さまざまな状況で最適な施工方法に困ることはありませんか?
そんな時に役立つ伸縮装置を会社や製品名などでまとめました。
伸縮装置とは
伸縮装置(橋梁用伸縮装置、ジョイント)とは、橋梁において桁同士をつなぐ箇所や、路面と橋梁をつなぐ箇所に設置するものです。
いわゆる河川に架かる橋、道路に架かる陸橋だけではなく、桁が連続する高架橋にも設置されています。

見た目は鋼材を爪型に加工した鉄の塊のようなものから、表面にゴム板が載っているようなものまで様々です。
黎明期にはヨーロッパから輸入した製品が使用されていましたが、徐々に国内生産に移行し、現在では多くの製品が国内で設計・製造されています。
橋梁や道路で伸縮装置を使う理由
橋桁は温度変化によって伸縮し、その値は桁長(m)×係数(0.4~0.72)で簡易計算することができます。
たとえば、桁長が200mの鋼橋では、余裕量を除いて120mm=12cmと、非常に大きな値になります。
ぴったりの寸法で橋桁を設置してしまうと、この伸縮のせいで橋桁が壊れてしまうので、橋梁には初めから遊間(あそび)を設けておきます。
ただ、このままでは隙間が空いたままになってしまい、危険ですよね。
そこで、この伸縮を許容し、歩行者や車両の通行を妨げない設備として、伸縮装置を設置する必要があるのです。
伸縮装置を選定する手順
伸縮装置の選定手順は以下の通りです。
常時移動量とは、温度によって伸縮する量のことです。
先述のように、桁長×係数で簡易計算が可能です。
もっとも、平成29年の道路橋示方書に則ると、より厳密な計算が必要となります。
次に、標準遊間量を確認します。
新設の場合など、橋梁がまだできていない場合は、橋梁一般図等の設計書類から確認します。
補修工事の場合は、既に橋梁があるので、できれば現場調査をした方が良いでしょう。
このとき、遊間量を測るだけでなく、現場調査時の気温を必ず確認してください。
必要なのは標準気温時の遊間量であるため、測定時の気温が高くても低くても、標準気温時の遊間からはずれていることが考えられます。
気温も記録した上で、温度当たりの移動量から標準遊間量を計算することになります。
常時移動量、標準遊間量がわかると、伸縮装置を簡易選定することができます。
各伸縮装置メーカーのホームページやカタログに記載されている「許容伸縮量」「標準適用遊間」をそれぞれ見比べて、最適なものを選定します。
※ちなみに、遊間量に関しては、橋梁の「標準遊間」が伸縮装置の「標準適用遊間」以下であれば、適用可能と考えます。
また、地震時移動量(橋軸方向・橋軸直角方向)、クリープ・乾燥収縮がある場合、これらの検討が必要になります。
STEP.3の伸縮装置の選定において、何社もある各伸縮装置メーカーのカタログを見比べることになります。
それはなかなかの重労働ですよね。
伸縮量と遊間量を入力することで各伸縮装置メーカーの製品が一覧で出てくる選定ツールがありますので、よろしければこちらもご活用ください。
伸縮装置施工の流れ
伸縮装置の施工(取替工事)の一般的な流れは以下の通りです。
コンクリートカッター車を用いて、必要な切欠き幅になるよう舗装版を切断します。
新しく設置する伸縮装置の製品高さにもよりますが、舗装天端から10cm程度カッターを入れることが多いです。
既設の伸縮装置を撤去します。
最初に後打ちコンクリートの斫り作業を行い、おおよそ必要な切欠き深さまでコンクリートを壊したら、伸縮装置を固定している鉄筋・アンカーバー等を溶断していきます。
斫り時にはコンクリートガラの飛散を防止するため、通行車両側に飛散防護ネットを立てます。
溶断時には火花が散るため、周辺環境に注意しながら施工を進める必要があります。
新しい伸縮装置を箱抜きに設置します。
比較的軽量な製品は4tユニック車で、重量のある製品は適宜クレーン車を用意して設置します。
舗装天端または別に目標とする高さをレベルなどで確認します。
基本的に溶接で固定をします。結束線を用いての固定は、高さのずれが生じる恐れがあるため、据付高さ±3mm(※発注者によっては0~2mm)というシビアな基準を守るために溶接しています。
取替工事の場合、3時間で強度が出る超速硬コンクリートを使用します。
超速硬コンクリートは、以下のメーカーのものを使用することが多いです。
・スーパージェットコンクリート:小野田ケミコ㈱
・ジェットコンクリート:住友大阪セメント㈱
・デンカスーパーセメント:デンカ㈱
後打ちコンクリートの強度が確認できたら、規制を開放します。
施工の流れについては、こちらの動画集も合わせてご覧ください。
いかがでしたでしょうか。
実際に伸縮装置の検討をされる場合は、下記のリンクにメーカーごと、製品ごとにまとめておりますので、ぜひご活用ください。