支承とは、橋の上部構造(橋桁など)と下部構造(橋台など)の間に設置された部材のことです。別名では沓(しゅう・くつ)とも呼び、英語の表記はBridge Bearingです。
支承には、橋や車から受ける荷重やたわみを支え、橋桁の伸び縮みに対応する役割があります。加えて、地震動にも対応しており、地震が頻発する日本ではとても重要な部材なのです。
この記事では、支承の歴史と主な役割、その種類について解説しました。また、支承の上にある伸縮装置との関わりもまとめましたので、支承に関する基本知識は全て網羅できます。
支承の歴史

日本の本格的な支承は、明治初期ごろに海外から導入された橋梁技術から始まります。明治以前は石橋や木橋がほとんどで、支承の構造は明確になっていませんでした。
支承の現在までの主な歴史は次の通りです。
明治期 | 海外から近代橋梁が取り入れられて支承を持つ橋が出現する |
大正期 | 関東大震災を契機に輸入品にはない地震へ対応した構造へと変化する |
昭和初期 | 自動車の増加に対し自動車交通を対象とする規定が作られる 内務省より現在の示方書の原点である「鋼道路橋設計示方書案」が発行される |
昭和後期 | 車両の大型化等を踏まえ鋼道路橋設計示方書に支承の細部規定を設ける 支承の設計体系や設計方針の確立を目的とした「道路橋支承便覧」が発刊される |
平成初期 | 兵庫県南部地震で多くの鋼製支承が損傷を受け、免震性の高い積層ゴム支承が注目される 道路橋支承便覧が改訂され機能分離型支承が記載される |
平成後期 | 東北地方太平洋沖地震により分散支承の破断が発生する 設計地震動の見直しと津波を考慮して道路橋示方書が改訂される |
このように、日本の支承は自動車の普及と地震災害の経験を元に、今日に至るまで様々な改良がされてきた歴史があります。
支承の役割

支承は橋梁の上部と下部の間にありますが、この部材が果たす役割は主に以下の3つです。
- 荷重伝達機能
- 水平移動機能
- 回転機能

支承には橋そのものの重量や車両の荷重がかかります。加えて、風や地震による水平方向への力もかかりますので、それらを下部構造に伝えるのが荷重伝達機能です。
そして、橋桁の温度変化等による伸び縮みに対応するのが水平移動機能で、車の重量等による橋桁のたわみを支えるのが回転機能です。
これらの機能を満たすことにより、橋が壊れるのを未然に防ぎ、長期的に使用できるように保っています。
近年ではこの基本機能の他に、アイソレート機能や減衰機能など、耐震性を高めるための仕組みも求められており、支承の重要性は益々高まっています。
基本的な構造
支承を構成する基本的な部位や構造は次の通りです。

沓座モルタルは、支承の設置位置を決める際や高さの調整に役立っています。ソールプレートは橋桁からの鉛直荷重を均一に伝えるのが主な役割です。
上沓(うわしゅう)は支承の上部構造、下沓(したしゅう)は下部構造のことですが、「沓(しゅう・くつ)」が支承の別名でもあります。そのため、支承を沓と呼ぶ関連業者も多いです。
支承の種類

支承には様々な種類がありますが、大きくは以下ふたつに分類することができます。
- 構造による分類
- 部材による分類
- タイプによる分類
構造による分類は、支承がどのような動きに対応できるかで選別しています。具体的には固定支承、可動支承、免震支承の3つです。
部材は鋼製かゴム製かで分類され、タイプはどれくらいの地震動に対応できるかで仕分けしています。
なお、種類については以下の記事に詳しくまとめましたのでご覧ください。
支承と伸縮装置の関係性

支承の上には、橋桁をつなぐ伸縮装置が設置されています。この伸縮装置から水が漏れて下部に流れると、支承が錆びて橋梁の寿命が短くなってしまうのです。

ただ、伸縮装置にも様々な種類があり、その選定計算に必要となるのが支承の情報です。そのため、支承は橋梁の耐久性にとても影響している部材と言えます。
詳しくは次の記事にまとめていますのでご覧ください。