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伸縮装置の後打ちコンクリートとは?【強度・規格や損傷・補修を解説】

ハイブリッドジョイントNS~LL型

後打ちコンクリートとは、伸縮装置を橋に固定するために、後から打ち込むコンクリートのことです。タイヤの重さを路面の一部として直接受けるため、伸縮装置本体と同じくらい重要な部材と言えます。

現代は昼夜問わず、多くの車が橋を利用しています。そのため、コンクリート部にひび割れや欠けなどの損傷が起こりやすく、求められる強度や規格をしっかりと押さえて施工・管理することが重要です。

この記事では、後打ちコンクリートの種類と求められる強度・規格から、起こりやすい損傷とその補修方法までをまとめて解説しました。

最後まで読めば、後打ちコンクリートの基礎知識は一通り押さえられます。

伸縮装置の後打ちコンクリートとは?

後打ちコンクリートを流し込む前の伸縮装置

後打ちコンクリートとは、伸縮装置を設置するときに箱抜きと呼ばれるくぼみへ後から打ち込むコンクリートのことです。

箱抜きとは、伸縮装置を収める場所に型枠などを使用してあらかじめ設けておく空間や穴のことを指します。

伸縮装置は箱抜き部に据え付けたあと、まわりに鉄筋を組み、コンクリートを打ち込んで固定します。つまり、後打ちコンクリートは伸縮装置と橋本体をつなぐ土台の役割を担っています。

後打ちコンクリートの主な役割は、次の3つです。

  • 伸縮装置本体を橋にしっかり固定する
  • 車両の重さ(輪荷重)を路面の一部として直接受け止める
  • 伸縮装置と舗装・床版の間をなめらかにつなぐ

なお、突合せ型の伸縮装置などでは、後打ち部にコンクリートではなく樹脂系の材料が使われる場合もあります。

伸縮装置そのものの役割については、次の記事で解説していますのでご覧ください。

≫伸縮装置とは?【橋梁や高速道路における役割を解説】

後打ちコンクリートの種類

後打ちコンクリートに使われるのは、主に次の3種類です。

  • 普通コンクリート
  • 早強コンクリート
  • 超速硬コンクリート

どれを使うかは、交通開放までにどれだけ時間をかけられるかで決まるのが基本です。3種類の違いを表にまとめました。

種類強度が出るまでの時間の目安主な使いどころ
普通コンクリート材齢28日で設計基準強度時間に余裕がある新設工事
早強コンクリート普通コンクリートより短期間
(材齢3〜7日程度)
工期を短くしたい新設工事
超速硬コンクリート材齢3時間で24N/mm²以上当日中の交通開放が必要な取替・補修工事

普通コンクリート

普通コンクリートとは、生コン工場から出荷される最も標準的なコンクリートのことです。強度が十分に出るまで約1ヶ月(材齢28日)かかるため、施工後すぐに車を通すことはできません。

そのため、交通開放を急がない新設工事などで使われるのが一般的です。コストを抑えやすく、品質が安定している点がメリットです。

早強コンクリート

早強コンクリートとは、早い時期に強度が出るように調整されたコンクリートのことです。早強ポルトランドセメントを使うことで、普通コンクリートよりも短い期間で所定の強度に達します。

普通コンクリートでは工程が間に合わない新設工事などで選ばれます。ただし、その日のうちに交通開放できるほどの速さはありません。

超速硬コンクリート

超速硬コンクリートとは、打設からわずか3時間で24N/mm²以上の強度が出る特殊なコンクリートのことです。ジェットコンクリートとも呼ばれます。

夜間などの限られた交通規制時間内に工事を終わらせる必要がある取替・補修工事では、超速硬コンクリートを使うのが標準的です。専用のミキサー車(モービル車)で現場練りされる点も特徴です。

詳しくは次の記事をご覧ください。

≫超速硬コンクリートとは –短時間で強度が出るコンクリート

後打ちコンクリートに求められる強度・規格

ここでは、後打ちコンクリートに求められる強度の目安と、品質管理で確認する規格・試験を解説します。

求められる強度の目安

後打ちコンクリートの強度は、床版と同等以上とするのが基本です。日本道路ジョイント協会の伸縮装置の設計ガイドラインでも、強度の指定がない場合は床版以上の強度とするよう示されています。

具体的には、設計基準強度24N/mm²以上が求められるケースが多いです。

特に取替工事では、打設後原則3時間の時点で圧縮強度24.0N/mm²以上を現地で確認してから交通開放する、という流れが標準になっています。

品質管理で確認する規格・試験

後打ちコンクリートの品質は、次のような試験・測定で管理します。

  1. 打設前
    スランプ試験(超速硬コンクリートの参考値は8±2.5cm)、空気量試験、塩化物含有量試験
  2. 硬化後
    圧縮強度試験(供試体を3本採取して確認)
  3. 出来形
    箱抜きの深さ、後打ちコンクリートと製品・舗装との高さの差(平坦性)

スランプ試験とは、固まる前のコンクリートの柔らかさ(流動性)を確認する試験のことです。

表面に凹凸があると走行性が悪くなるうえ、水がたまる原因にもなるため、仕上がりの平坦性は直定規などを使って確認します。

また、強度を確実に出すには養生も重要です。超速硬コンクリートでは、急激な水分の蒸発によるヘアクラック(髪の毛のように細いひび割れ)を防ぐため、メーカー専用の被膜養生材を塗布します。

気温が5℃を下回る時期には、ジェットヒーターなどで温めながら養生する給熱養生を行います。

出来形管理について詳しくは、次の記事をご覧ください。

≫伸縮装置の出来形管理(品質管理)

後打ちコンクリートの主な損傷と原因

段差ができた後打ちコンクリート
段差のできた後打ちコンクリート

後打ちコンクリートは、車両の衝撃を毎日受け続けるため、橋の中でも損傷が起こりやすい部位です。

後打ちコンクリートに多い損傷は次の4つです。

  • ひび割れ・欠損
  • 浮き・剥離(はくり)
  • 舗装との段差・隙間
  • 磨耗

ひび割れ・欠損は、最も多い損傷です。放置するとひび割れの幅や長さが広がり、やがて部分的な欠けへと進行します。

浮き・剥離は、後打ちコンクリートが床版から剥がれて浮いている状態です。車両が通過するときに「ゴトゴト」という異音がする場合は、浮きが疑われます。

舗装との段差・隙間は、舗装の轍掘れ(わだちぼれ)や沈下によって生じます。段差があると車両からの衝撃がさらに大きくなり、損傷を加速させる悪循環に陥ります。

磨耗は、タイヤや除雪車によって表面が削られる損傷です。スタッドレスタイヤの普及により、大きな磨耗は減少傾向にあります。

損傷・ひび割れが起こる原因

後打ちコンクリートの損傷は、主に次のような原因で起こります。

  • 車両からの荷重・衝撃
  • 養生不足による初期ひび割れ
  • 打継ぎ面の処理不良による付着不足
  • 後打ちコンクリートの幅と橋台の形状が合っていない
  • 舗装の轍掘れや橋台部の沈下

もっとも大きな原因は、車両から受ける荷重です。伸縮装置の部分はどうしても段差や継ぎ目ができやすく、タイヤからの衝撃が集中するためです。

施工が原因の損傷もあります。打設直後に表面が急激に乾燥するとヘアクラックが発生しますし、既設コンクリートとの打継ぎ面の清掃・接着処理が不十分だと、一体化できずに浮きや剥離が生じる恐れもあります。

また、後打ちコンクリートの幅が橋台のパラペットの天端幅(橋台上部の壁状の部分)より広いと、橋台背面の位置でひびが入るケースがあることも知られています。

ひび割れや隙間を放置すると、雨水が桁の端部へ回り込み、漏水による橋本体の劣化につながります。詳しくは次の記事をご覧ください。

≫伸縮装置からの漏水が及ぼす橋梁への影響

後打ちコンクリートの補修方法

後打ちコンクリートの補修は、損傷の程度に応じて方法を選びます。点検での判定の目安を表にまとめました。

損傷の程度判定の目安主な対応
微細なひび割れ経過観察定期点検で進行を確認
ひび割れの進行、磨耗、舗装との段差(10mm以下)補修計画の対象ひび割れ注入・段差修正など
大きな割れ・浮き・欠損・沈下至急補修部分打ち替え・伸縮装置の取替

点検と補修に関しては、次の記事で解説していますのでご覧ください。

≫伸縮装置の補修方法|点検の種類と判定内容について解説

ひび割れ注入・部分打ち替え

ひび割れ注入とは、ひび割れに樹脂系などの材料を注入してふさぐ補修方法です。欠損が生じている場合は、傷んだ部分を撤去してコンクリートを打ち直す、部分打ち替えを行います。

ただし、部分的な補修では根本的な解決に至らないことが少なくありません。損傷が繰り返される場合は、伸縮装置ごと取り替えるのが基本とされています。

段差の修正

舗装との段差には、瀝青(れきせい)系や樹脂系の専用段差修正材を使います。段差を解消することで走行性が改善し、後打ちコンクリートへの衝撃も軽減されるのです。

段差は10mm以下でも補修計画の対象とされるため、小さいうちに対処するのが望ましいと言えます。

伸縮装置ごとの取替

損傷が大きい場合や、装置本体にまで損傷が及んでいる場合は、伸縮装置ごと取り替えます。取替工事では超速硬コンクリートを使い、限られた交通規制時間の中で交通開放まで完了させるのが標準的です。

取替工事の手順は、次の記事で解説しています。

≫伸縮装置の取替【工事の手順と3つの注意点を解説】

以上です。

後打ちコンクリートは目立たない部材ですが、伸縮装置の寿命を左右する重要な存在です。強度・規格を守った施工と、損傷を早期に見つける点検を心がけましょう。