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地震による揺れは伸縮装置選定にどう影響する?地震時移動量からの選定手順

日本は地震大国なので、あらゆる構造物において耐震性を持たせる必要があります。
橋梁についても同様で、地震の際に橋台や橋脚が壊れてしまわないように
設計しています。
地震時の揺れが伸縮装置の選定にも影響しますので、この記事ではその点について
ご紹介します。

地震の揺れの種類

「地震」を分類する場合、一般的に知られているのは「震度」や「マグニチュード」
ですよね。
橋梁業界においては、「レベル1地震動」「レベル2地震動」という言葉の方が
よく使われます。

レベル1地震動:その構造物が一度以上受けるであろう地震動のこと。
比較的頻繁に起きると考えられることから、この地震動において、
構造物がほぼ無傷で耐えられるよう設計します。
レベル2地震動:その構造物が受ける可能性のある最大の地震動のこと。
この地震動において、構造物の倒壊などにより人身に被害が
起きないよう設計します。

定義があいまいだったため、目安が設定されています。
「1秒間に何センチメートル変位したか」を示す「カイン」という単位で、
レベル1地震動は25カイン以上、レベル2地震動は50カイン以上という
基準になっています。

伸縮装置は、レベル1地震動においてはこれに追従するか耐えるよう設計し、
レベル2地震動においては壊れることで構造物(橋梁)を守るように
設計します。

地震時移動量の記載

地震時移動量は、一般に解析で求められ、上部工計算書等に記載されます。
常時移動量(温度変化による移動量)と異なり、圧縮方向と引張方向の
値は異なることが多いです。
圧縮方向は+(プラス)表記、引張方向は-(マイナス)表記になって
いるため、混乱しがちです。

遊間が“圧縮”される場合は、桁が“伸びる”ので +(プラス)
遊間が“引張”られる場合は、桁が“縮む”ので -(マイナス)

わかりにくいですが、1回覚えてしまえば大丈夫なので、覚えてしまいましょう。
各メーカーの伸縮装置も、カタログやホームページに記載がないこともありますが、
必ず地震時の許容伸縮量(復元移動量と言います)が設定されています。

地震時移動量から製品を選定する方法

地震時移動量がわかったところで、伸縮装置の選定はどのように
行えばよいのでしょうか。
具体的な例を使って説明したいと思います。

常時移動量  30mm(±15mm)
地震時移動量 +15,-25
(常時移動量と地震時移動量は、余裕量を含む)

という条件があったとします。
各メーカーの伸縮装置のラインナップが以下のようだったとすると、
選定可能な製品はどれになるでしょうか。

A 許容伸縮量20mm(±10mm)、復元移動量+15mm,-20mm
B 許容伸縮量30mm(±15mm)、復元移動量+10mm,-30mm
C 許容伸縮量30mm(±15mm)、復元移動量+20mm,-25mm

この場合、選定可能なのは「C」の伸縮装置のみです。
「A」は、許容伸縮量を満たさないので、選定できないのがわかりやすいですが、
「B」なら、復元移動量が合計40mmになるし、条件を満たすように見えます。
ここで知っておかなければならないのが、伸縮装置の復元移動量とは
どういった性質のものなのかということです。

まず、温度変化による伸縮において、伸縮装置は下図のような挙動をします。
両側歯型製品の断面を例にとって説明します。

常時移動量

左が最も気温が高い(桁が伸びている)ときの図で、右が最も気温が低い(桁が縮んでいる)ときの図です。
一番縮んでいるときでも、少しだけ余裕があるように設定されています。

復元移動量は、たいてい、許容伸縮量よりも大きな値になっています。
温度伸縮は毎日の動きなので、余裕を見ておく必要があるのに対し、
地震というのは一時的なもので、その瞬間に耐えられればよいという
性質であるためです。

しかしながら、それでも、製品の爪同士がぶつかってしまうような
設計では、製品が壊れてしまいますし、
逆に引っ張られすぎても、製品の止水部が切れて壊れてしまいます。

過負荷

よって、「圧縮(+)方向」「引張(-)方向」それぞれを満たす選定を
する必要があるのです。

つまり、伸縮装置の選定に関してまとめると、以下の通りになります。

設計条件   求められる製品の性能
常時移動量 許容伸縮量
地震時移動量(圧縮+方向) 復元移動量(+)
地震時移動量(引張-方向) 復元移動量(-)
標準遊間 標準適用遊間

それぞれの値をクリアする製品を見つけ、適切な選定を行いましょう!