PC橋とは、プレストレスト・コンクリートを使用した橋梁のことです。鉄筋コンクリートの橋と比べて強度が高いため、スパンが長い場合でも使用できます。
また、PC橋は構造ごとに種類が分かれており、それぞれに特徴も違います。そのため、使用環境に合わせて設置することが必要ですが、それには各特徴を理解していなくてはいけません。
この記事では、PC橋とはどんなものかメリット等を踏まえまとめました。加えて、鋼橋との違いも紹介しましたので、PC橋の基礎知識としてご覧ください。
PC橋とは

PCとはプレストレストコンクリート(Prestressed Concrete)の略です。
本来、コンクリートは引っ張られる力に弱い性質があります。しかし、あらかじめコンクリートを両側から圧縮し、鋼材で固定することによりその弱点を補ったのがPCです。
普通の鉄筋コンクリートを使用した橋(RC橋)と比べると、PC橋には次のメリットがあります。
- ひずみでひび割れが発生しにくい
- 荷重に強く長いスパンに耐えられる
- 耐久性・耐震性が高い
特にひび割れは、漏水が起きて橋の寿命を縮める可能性が高いので大きな利点です。その一方で、単位あたりのコストはPC橋が高いので、施工時の費用は膨らむ可能性があります。
PC橋の使用割合
現在の橋は、PC橋やRC橋の他にも鋼橋や複合橋と様々な種類があります。その中でもPC橋はかなりの割合を占めており、平成17年の調査では以下の結果となっていました。

橋長15m以上の道路橋だと、PC橋は全体の約38%も占めていました。
しかし、この調査は平成17年に行われたものです。橋の建造の多くはPCが採用されるケースが多いため、現在はPC橋が1番多い可能性が高いと考えられます。
PC橋の種類と構造

PC橋には様々な種類があり、コンクリートへの圧縮方法(プレストレス)と使用するPC鋼材の2つで大きく分類できます。
また、それぞれに異なる構造や方法がありますので、その名称と内容を紹介します。
圧縮方法による分類
コンクリートの圧縮には、以下2つの方法があります。
- プレテンション
- ポストテンション
プレテンション

PC鋼材をピンと引っ張って、緊張させた上でコンクリートを流し込み、固まった後にPC鋼材の両端を切ってコンクリートを圧縮する方法です。あらかじめ工場で部材を作るので、現場での負担が少なく作業管理がしやすく品質も安定します。
一方で、大きな部材を現地に運んでクレーン等で設置する必要があるので、重機などの予算を考慮しなくてはいけません。そのため、比較的小さい橋に採用されるケースが多いです。
ポストテンション

コンクリートにシース管と呼ばれる金属製チューブを通し、固まった後にシース管内を通るPC鋼材を左右に引っ張ってコンクリートを圧縮する方法です。
現場での作業となるので工期は長くなる傾向にあり、圧力を加えるジャッキやPC鋼材を固定する定着具などの道具も必要になります。
しかし、圧縮の程度をコントロールできるため大型の橋にも使えて、曲線でも施工できるというメリットもあります。
PC鋼材による分類
PC鋼材の張り方は以下3つの方法に種類が分かれます。
- 内ケーブル
- 外ケーブル
- 内外ケーブル併用

内ケーブルはコンクリートとPC鋼材が付着しているため、せん断耐力に優れているのが特徴です。
外ケーブルはコンクリート内部にPC鋼材を入れないので、断面を薄くして自重を軽くできるメリットがあります。加えて、劣化したPC鋼材を取替えたり、追加でケーブルをしてより圧縮力を加えることも可能です。
PC橋と鋼橋の違い

鋼橋はPC橋と同様に多くの橋梁に使われている構造です。しかし、それぞれに使われている材料が異なるため、特徴にも大きな違いがあります。
PC橋 | 鋼橋 | |
---|---|---|
費用 | 安い | 高い |
重量 | 重い | 軽い |
修繕 | しにくい | しやすい |
PC橋は建設時のコストが抑えられ、かつ強度もそれなりに高いという点で採用されています。しかし、自重が重いので地盤が柔らかいと難しいので、その場合は鋼橋が採用されるケースが多いです。
また、鋼橋は傷んでいる箇所がわかりやすく、手直しもしやすい点で優れています。加えて、強度も鋼橋が強く重量も軽いので、地震の多い日本には適した構造と言えるのです。
その一方で、鋼橋はとても揺れやすく度々問題にもなっています。そのため、コンクリートと鋼材を組み合わせ、互いの特徴を活かした複合橋も建設されています。
鋼橋については次の記事でも紹介していますのでご覧ください。