斜張橋とは、塔からケーブルを張り出して、それを橋桁につないで橋全体を支える構造の形式です。ケーブルが放射状に広がる幾何学的な美しさが特徴で、横浜ベイブリッジや多々羅大橋など、多くのランドマークとして親しまれています 。
斜張橋は橋桁の下に広い空間を確保でき、片持ち架設工により施工性も優れています。しかし、ケーブルの維持管理が難しく、風により激しく揺れることもあるため、設計には注意が必要です。
この記事では、斜張橋の特徴をメリット・デメリットを踏まえて解説します。また、吊り橋との違いや有名な斜張橋も紹介しますので、概要を押さえるためにご覧ください。
斜張橋とは

斜張橋とは、橋を支える高い塔(主塔)から斜めにケーブルを張り、そのケーブルで橋桁を直接吊り下げて支える構造の橋を指します。
一般的な桁橋やアーチ橋では、荷重を主に桁やアーチ部材が支える仕組みになっています。一方で斜張橋は、主にケーブルが引張力を負担し、圧縮力は塔が担当するという仕組みです。
構造的には、桁橋よりも長い距離を渡すことができます。しかし、吊り橋ほど超長距離は難しいため、支間長が300~500m程度が最も適した長さとされています。
吊り橋との違い
斜張橋と見た目が似たものに吊り橋があります。どちらも塔とケーブルを使用する点では共通していますが、仕組みと力の伝わり方が大きく異なっています。
| 種類 | 構造 | 力の伝達 |
|---|---|---|
| 斜張橋 | 塔から斜材ケーブルを張り、橋桁に橋桁に直接繋ぐ。 | 橋桁の荷重をケーブルで塔に伝達し、塔を介して地盤に伝える。 水平方向の力は塔の両側で釣り合う。 |
| 吊り橋 | 各塔の間を渡した太いメインケーブルから、垂直にハンガーロープを垂らして橋桁を吊り下げる。 | 橋桁の荷重をハンガーロープでメインケーブルに伝え、塔を介して地盤に伝達する。 水平力は橋両端のアンカレッジで支える。 |
吊り橋との大きな違いは、斜張橋はアンカレッジという巨大なコンクリートの重りが必要ない、という点です。
そのため、軟弱な地盤やアンカレッジを設置するスペースがない都市部でも建設できる、という特徴があり、斜張橋の大きな強みになっています。
斜張橋の特徴

斜張橋の構造は、他の橋にはない多くのメリットを生み出しています。その一方で、設計や維持管理においてデメリットとなる点も併せ持っています。
メリット
斜張橋の具体的なメリットは次の通りです。
- 桁下の空間を確保できる
- 景観性が高い
- 施工性に優れる
桁下の空間を確保できる
斜張橋は、桁橋やアーチ橋では難しい300~500m程度の支間長にも対応できます。加えて、ケーブルにより桁を弾性的に支えることで、橋桁を曲げる力が減少するため、桁高を薄く設計できます。
これにより、橋の下を大きく開けることができ、大型船が通る航路でも設置が可能となります。
景観性が高い
塔とケーブルが作り出す独特のシルエットは、モニュメントとしても計画しやすい外観をしています。直線で構成された幾何学的な景観は、地域のシンボルやランドマークとしてもなりやすく、ライトアップにより観光資源としても活用できます。
施工性に優れる
斜張橋の施工は、橋の下に大規模な足場を組む必要がない「片持ち架設工法」と相性が良いです。この工法は、地上からの支えは作らずに、橋の両端や塔から橋桁を張り出して施工をします。
これにより、橋下の航路や交通を妨げず効率的に建設ができます。加えて、深い谷や川でも施工が可能で、経済的に施工できるというメリットがあります。
デメリット
斜張橋のデメリットは次の通りです。
- ケーブルの維持管理が難しい
- 風による振動に配慮が必要
ケーブルの維持管理が難しい
斜張橋の生命線である斜材ケーブルは、高強度の鋼線を束ねた構造をしています。この鋼線の束は常に高い張力がかかった状態で、雨風や紫外線に晒されています。
そのため、腐食や疲労、破断などのリスクがあり、長期的な点検や補修が不可欠です。最近はケーブルの防食技術が進んでいるものの、ケーブルの定着部などの状態把握には専門的な検査が必要となります。
風による振動に配慮が必要
斜張橋は軽量で薄い構造のため、風の影響を受けやすい側面があります。特に、風と雨によって振動するレインバイブレーションや、ケーブルに雪などが付着して断面の形が変わり、強風で激しく揺れるギャロッピングなど、斜張橋特有の現象への対策が設計上必要です。
斜張橋の種類

斜張橋は、ケーブルの張り方によって以下3つに分類することができます。
- ファン型
- ハープ型
- セミファン型
ファン型
ファン型は、塔の頂部付近から橋桁に向かって扇のようにケーブルを取り付ける形式です。塔に余計な曲げる力がかかりにくく効率的とされる一方で、ケーブルが局所的に集中するため、施工やメンテナンスがやや複雑になる場合があります。
ハープ型
ハープ型は、ケーブルがほぼ等間隔に設置され、すべてが平行に張り出している形式です。
高さ方向に分散してケーブルを定着させるため、塔頂部への荷重集中を避けられます。一方で、ケーブル長がやや長くなり、張力の調整や施工管理が複雑になるケースもあります。
セミファン型
セミファン型は混合型ともいわれ、ファン型とハープ型2つの中間的な形式です。短いケーブル長と高い構造効率、塔への荷重分散をバランスよく両立させたもので、現代の長大斜張橋で最も多く採用されています。
日本と世界の有名な斜張橋

日本国内や世界を見渡すと、技術的にも見た目的にも有名な斜張橋が数多く存在しています。以下に代表例をご紹介しましょう。
多々羅大橋(広島県・愛媛県)

しまなみ海道を構成する橋で、中央支間長が890mと完成当時(1999年)は世界最長の斜張橋でした。当初は吊り橋として計画されていたものの、斜張橋技術の急激な進歩により斜張橋に変更された、というエピソードがあります。
名港トリトン(愛知県)

伊勢湾岸自動車道にある3つの斜張橋(名港東大橋・名港中央大橋・名港西大橋)の愛称です。湾岸部のランドマークとして国土交通省の資料に紹介されており、それぞれの橋が赤・白・青のトリコロールで塗装されています。
ルースキー橋(ロシア)

ルースキー橋は2012年に完成し、現在でも世界最大級の支間長を持つ橋です(1,104m)。橋が設置される地域は気象条件が厳しいため、マイナス40℃でも耐えられる設計をしています。
ノルマンディー橋

セーヌ川の河口にかかるノルマンディー橋は、中央支間長856mで完成当時(1995年)は世界最大規模でした。景観性の高い橋として有名です。
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