床版(しょうばん)とは、車などの荷重を直接受けている床のことです。アスファルトなどの下に床版は敷かれているため、外観からはその形を確認することはできませんが、上部構造の一部として道路橋を支える重要な役割を担っています。
また、床版は使用される材料や構造によってさまざまに分類が可能です。一般的なものはRC床版ですが、鉄筋とコンクリートで構成され経済的ではあるものの、ひび割れなどが起きやすい特徴があります。
この記事では、床版とは何か解説し、その種類やそれぞれの特徴についてまとめました。加えて、床版の劣化や対策についてもまとめましたので、最後まで読めば床版の概要は押さえられます。
床版とは

床版とは、橋の上を通過する車両や歩行者から受ける荷重を直接支え、その荷重を橋桁などに伝えるための部材です。床版があることにより、集中した車輪からの荷重が広い範囲に分散され、橋全体で荷重を支えることができます。
一般的な道路橋では、床版の上に防水層とアスファルトが敷かれています。そのため、もし床版に重大な損傷が発生すれば、荷重が橋全体に伝わらず橋の耐久性や安全性が保てなくなるのです。
床版と床板との違い
床版と似た言葉に床板(ゆかいた)があります。両者の意味は次のように異なっています。
| 床版 (しょうばん) | 荷重を支える構造的な床 |
| 床板 (ゆかいた) | 人が直接踏む床の表層部分 |
床版は土木分野において、橋などの構造体そのものを意味しています。一方で床板はフローリング材やタイルなどの内装材を指し、公的資料において統一性を保ち明確に区別しています。
床版の種類

床版は構造や材料により、様々な種類に分類されています。橋の形状やスパンなど、用途に応じて使い分けており、代表的な種類は次の通りです。
- RC床版
- PC床版
- 鋼床版
- 合成床版
- 延長床版
RC床版
RCは鉄筋コンクリート(Reinforced Concrete)の略で、長い実績がありもっとも一般的な床版です。鉄筋で型枠を組み、コンクリートを打設して一体の板にした構造をしています。
施工が比較的容易で経済的ですが、車両の荷重による疲労ひび割れが発生しやすいです。そのため、鉄筋腐食などのひび割れ対策が必要となります。
PC床版
PCはプレストレストコンクリート(Prestressed Concrete)の略です。鉄筋の代わりにPC用緊張材を使用し、あらかじめコンクリートに強い圧縮をかけて硬化させることで、引張力に対する抵抗性やひび割れが発生しにくくなります。
RC床版と比べて薄い板厚でも耐久性を保つことができ、プレキャスト化(工場製造)して現場の省力化も可能です。一方で、プレキャスト部材の継ぎ目から透水する可能性が高いことがデメリットと言えます。
鋼床版
鋼床版は、縦リブと横リブと呼ばれる肋材(ろくざい)を格子状に溶接し、鋼板を取り付けた構造をしています。コンクリートの床版に比べ軽く、橋梁の重量を減らせるので、橋長の長い橋などで使用されます。
また、複雑な曲線橋でも使えるため、インターチェンジなどの曲率の高い道路でも利用可能です。一方で、輪荷重が多い道路では疲労による亀裂や舗装との剥離などが起こるので、高い溶接技術や維持管理が求められます。
合成床版

鋼板とコンクリートを組み合わせて一体化させたのが合成床版です。日本橋梁建設協会が定めた合成床版では4種類に分類されていますが、中でもコンクリートと底鋼板を頭付きスタッド(ずれ止め)で一体化したロビンソンタイプが代表的な構造です。
床版の厚みを増やさずに耐久性や剛性を高められるので、疲労破壊しにくく長寿命化が期待できます。加えて、取替工事の工期短縮や維持管理も省力化でき、ライフサイクルコストの低減にも貢献しています。
延長床版

延長床版は、橋の底板部分を橋台の盛土部分まで延長させた構造をしています。これにより、橋台との遊間に生じていた段差が解消され、騒音や振動の低減ができるうえ、遊間からの漏水を防止して、支承部の腐食劣化を抑えることが可能です。
加えて、既存の橋梁にも対応できるので、走行性やライフサイクルコストの観点から導入する橋は多くなっています。一方で、床版を長く伸ばすので、温度伸縮や地盤沈下による変化への対応が課題となっています。
床版の劣化と維持管理

床版は道路橋の中で最も早く傷みやすい部位とされています。これは、以下2つが大きな要因となっています。
- 車の荷重による疲労の蓄積
- 雨水や塩分による腐食などの進行
輪荷重を受けることで疲労によるひび割れが増え、雨水などでコンクリートの中性化や鉄筋の腐食が進行しやすくなります。特に、規制を超える重量の貨物トラックが走行すると、床版へのダメージは大きく増えるため、取り締まりを強化する高速道路もあります。
現在、日本の道路橋の多くは高度経済成長下で建設されたもので、各地で橋梁の老朽化が問題になっています。そのため、各自治体では計画的に補修を行う予防保全を軸とした橋梁長寿命化修繕計画を策定し、橋の安全を保ちつつ、コストを抑える取り組みが行われています。


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