アーチ橋とは、弧を描くアーチで自重や車両の荷重を支える橋です。桁橋に次いで2番目に古い歴史を持つ形式であり、現代でも重要な交通網のひとつとして採用されています。
特徴としては、構造的に強度が高く、長い支間長を支えられる、というメリットがあります。その一方で、地盤が強い場所でなければ設置できない、という条件もあるため、施工環境には十分注意しなくてはいけません。
この記事では、アーチ橋の概要と構造、有する特徴について解説します。加えて、アーチ橋の分類や、日本の有名なアーチ橋についてもまとめました。
アーチ橋とは

アーチ橋は、上向きに弧を描き、”弓なりの形状”を主な骨組みとして作られた橋のことです。別名で拱橋(きょうきょう)とも呼ばれており、材料によって鋼やコンクリート、石造や木造などに分類されています。
最大の特徴は、強度が非常に高いという点です。それを証明するように、紀元前に建造された石造のアーチ橋が残っており、現在でも使用されています。
アーチ橋の仕組み
アーチ橋の強さの理由は、曲線の形状によって荷重を”押す力”にして流す仕組みにあります。
一般的な桁橋に車両が通ると、橋には下に向かう大きな荷重が発生し、下にたわもうとします。

アーチ橋の場合は、下向きの力が曲線に沿って両端の基礎へと流れていきます。その際、部材には押しつぶす力(圧縮力)が働くため、圧縮力に強い石やコンクリートがアーチ橋にはよく使用されているのです。
アーチ橋の構造

アーチ橋は、いくつかの重要な部材が組み合わさって構成されています。代表的な部材の名称とその役割について解説します。
上弦材(アーチリブ)
アーチ橋の上部にあり、弓なりに曲がった骨組みを指します。この部材で荷重を受け止め、両端の土台へと力を伝えています。
下弦材(補剛桁)
人や車両が通る道路部分(床版)を支える梁を指します。アーチ橋全体の変形を防ぐ役割も担っています。
吊り材(鉛直材)
上弦材と下弦材をつなぐ部材です。アーチが路面よりも上にある場合は道路を吊り下げ、路面よりも下にある場合は道路を支える役割を果たしています。
アーチ橋の特徴

橋梁の建設を計画する際、アーチ橋が選ばれるのには様々な理由があります。その特徴をメリット・デメリットに分けてそれぞれ解説します。
メリット
アーチ橋の具体的なメリットは次の通りです。
- 長い支間長を支えられる
- 景観性(シンボル性)が高い
長い支間長を支えられる
一般的な桁橋よりも長い距離を渡すことが可能です。圧縮力を活用して荷重を地盤に伝えるため、深い谷に橋脚を立てる必要がなく、地形の制約を超えてダイナミックな橋を建設できます。
景観性(シンボル性)が高い
アーチ橋は滑らかな曲線を描いており、合理性を追求した無駄のないフォルムは美しい意匠となります。山や河川などの自然環境と調和しやすく、都市部ではランドマークとしてシンボル的な役割も果たしています。
デメリット
アーチ橋のデメリットは次の通りです。
- 設置できる環境が限定される
- 施工(架設)が難しくなりやすい
設置できる環境が限定される
アーチ橋は、荷重を圧縮力に変えて下部に流すことにより、土台には押し広げようとする強い力(水平力)が発生しています。橋台を大きくすると膨大なコストがかかってしまうため、水平力に耐えられる強靭な地盤にアーチ橋を建設するのが現実的です。
施工(架設)が難しくなりやすい
アーチ橋は曲線になっているので、完成するまでは自立することができません。建設途中で構造が大きく変化して仮支えが大掛かりとなり、施工の難易度は高くなります。
アーチ橋の種類

アーチ橋の種類は多岐にわたり、力の伝わり方や路面の配置、部材の構成など様々に分類することもできます。
ここでは、分類ごとの基準に基づき、主要なアーチ橋の種類を解説します。
路面の位置
人や車が通る路面がどこに位置するかで、以下3つの種類があります。
上路式

アーチの上に路面がある形式です。深い渓谷などでよく使用されており、路面の上が開けているので見晴らしがとても良いのが特徴です。
下路式

アーチの下に通路が下がっている形式です。橋の下の空間を広く使えることが特徴で、下に十分な空間がない地形や、船を通したい場合に採用されています。
中路式

アーチの中間部分に路面がある形式です。上路式と下路式、どちらのメリットも兼ね備えており、地形の制約に柔軟に対応できる特徴があります。
無補剛アーチ
荷重に対しアーチリブのみで対応するのが無補剛アーチです。無補剛アーチは以下4つの種類があります。
固定アーチ

両端の支点が基礎に完全に固定されており、回転や移動ができない構造です。高い剛性(変形しにくさ)を得られる一方で、強固な地盤地質でのみ採用されます。
2ヒンジアーチ

両端の支点にヒンジを設けた形式です。温度変化による鋼材の膨張や収縮などの影響を緩和できるため、長大なアーチ橋の多くで採用されています。
3ヒンジアーチ

両端に加えて、アーチの頂上部分にもヒンジを設けた形式です。基礎の片側が沈下しても、3つのヒンジが変形して対応できるため、地盤がやや不安定な場所でも架設ができます。
タイドアーチ

アーチの両端を引張部材(タイ)で結び、外に広がる力をタイが受け持つ形式です。基礎に水平力が発生しないので、地盤の弱い場所でも設置できます。
補剛アーチ
荷重に対し、アーチリブと強い剛性を持つ補剛桁の両方で対応するのが補剛アーチです。補剛アーチは以下4つの種類があります。
ランガー橋

アーチリブは圧縮力だけを請け負い、橋桁に大きな曲げ剛性を設けた形式です。アーチリブは、多くの直線で構成された多角形になっており、比較的小さなアーチ橋に採用されます。
ローゼ橋

アーチリブと橋桁のどちらにも曲げ剛性を持たせ、吊り材で結んだ形式です。アーチリブはランガー橋のものより太く、曲線の部材で構成されることが多いです。
ニールセンローゼ橋

橋桁とアーチリブが曲げ剛性を持ち、網目状にケーブルを組んだ形式です。力を分散させることでたわみや振動が少なく、近年はこの形式を採用するアーチ橋が増えています。
有名なアーチ橋

日本には、歴史的に価値の高いものから、最新の技術を駆使したものまで幅広いアーチ橋が存在しています。その一部をピックアップして紹介します。
錦帯橋(山口県)

日本を代表する木造のアーチ橋です。釘を一本も使っておらず、木組みの技術だけで構成されており、世界的にも非常に稀有な構造をしています。
広島空港大橋(広島県)

アーチ支間が380mもあり、日本で一番大きなアーチ橋です。広島スカイアーチという愛称でも知られ、アーチ直下にJRなどが通っているため、自走式移動防護工を始めて使用し施工した橋でもあります。
十三大橋(大阪府)

淀川にかかる十三大橋は、昭和7年に開通したアーチ橋で、日本では珍しい5連のタイドアーチ橋の構造をしています。
橋台・橋脚とは – 橋梁を支えるもの
支承の種類【分類の方法と支承の決め方や見分け方を解説】
レディーミクストコンクリートとは【種類やフレッシュコンクリートとの違いを解説】
バックアップ材とは?【求められる機能と伸縮装置における役割について解説】
用語集【ライフサイクルコスト】