支承は、車両などの荷重や橋桁の伸び縮み、加えて地震動にも対応することが求められています。その役割を果たすには様々なアプローチが必要で、それに伴い、支承の種類も段々と増加しているのが現状です。
また、それぞれの支承がその機能を十分に全うするには、適切な環境で使用することが求められます。そのためには、どんな種類がありその特徴は何なのかを理解することが大切です。
この記事では、支承の種類について解説しました。加えて、選定の方法や見分け方までまとめましたので、最後まで読めば分類は大まかでも理解できるはずです。
支承の分類と種類

支承には様々な種類がありますが、大きくは以下の3つに分類することができます。
- 構造による分類
- 材料による分類
- タイプによる分類
構造による分類
支承の構造は、その作りによって果たせる役割が異なります。代表的な構造とその働きを以下の内容に分けて解説します。
- 固定支承
- 可動支承
- 免震支承
固定支承
固定支承は橋脚・橋台と橋桁が引っ付くように固定された構造をしています。動かないので安定しており、基本的には橋や車などから受ける鉛直荷重とたわみなどの回転力に作用します。
可動支承
可動支承はローラーやすべり面を使って支承がスライドできるような構造をしています。橋桁が温度変化で伸び縮みするのに対応し、回転力や地震などの水平の荷重にも作用します。
免震支承
免震支承は積層ゴムなどが組み込まれた構造をしています。ゴムの弾性を活かし、地震のエネルギーを吸収させて橋梁の揺れを低減できるのが特徴です。
また、各支承は図面で以下のように表示されています。
- F:Fix(固定支承)
- M:Move(可動支承)
- E:Elastic(免震支承・水平力分散支承)

ラーメン橋は橋桁と橋台・橋脚が剛結されているため支承がありません。その場合はR:Rigidと図面上で表現されることもあります。
部材による分類
使用されている主な材料で分類すると大きく以下2つに分けられます。それぞれの特徴を解説します。
- 鋼製支承
- ゴム支承
鋼製支承
鋼をベースに製造された支承で、明治初期ごろに導入されたのはこの鋼製です。鋼製支承にもピン支承やピボット支承など様々な形があり、働きもそれぞれで異なります。
詳細は次の記事にまとめていますのでご覧ください。
≫鋼製支承とは?【特徴やゴム支承との違い、種類や損傷内容を解説】
ゴム支承
ゴムと鋼板を組み合わせた支承で、免震性が高く地震の多い日本ではよく使用されています。ゴム支承にもパッド型や分散型と色々な形があり、構造も働きも異なっています。
詳細は以下の記事でまとめているのでご覧ください。
タイプによる分類
支承がどのレベルの地震動に耐え得るかで、以下2つに分けられます。それぞれの特徴を解説します。
- タイプA
- タイプB
タイプA
タイプAは地震動レベル1(頻繁に起きる中程度の地震)に抵抗できる支承です。その上のレベル2には、落橋防止壁などの変位制限構造と併用することで対応します。
ただし、道路橋示方書が平成24年に改訂されたことで、タイプAの支承は原則として廃止になりました。
そのため、設置されているタイプAの支承は、取替えるか補強する必要があります。
タイプB
タイプBは地震動レベル2(最大規模の地震)にも対応できる支承です。減衰・免震機能がついており、支承部が傷んでも落橋しない設計になっています。
道路橋示方書の改訂で、現在設計されている橋梁の多くはこのタイプBの支承を採用しています。
支承の選定(決め方)

使用する支承の選定は、周辺の状況や橋の構造など、様々な要素を踏まえて検討します。しかし、衝撃を緩和でき、地震力への信頼性が高いという理由から、一般的にはゴム支承を用いるのが基本です。
ただし、上部構造によっては鋼製支承の方が良いケースもあるので、その場合は鋼製支承を採用することになります。
支承選定の際、具体的に検討する内容としては次の通りです。
観点 | 内容 |
---|---|
荷重条件 | 反力、移動量、回転量などの力学的条件 |
構造特性 | 上部・下部構造の形式、たわみ、変位の特性 |
地盤条件 | 液状化の有無、剛性、共振リスク |
経済性 | 支承サイズ、構造取り合い、材料コスト等 |
維持管理性 | 点検、交換のしやすさ、ジャッキアップ可能か |
統一性 | 同一支承線上では原則1~2種類に統一 |
安全性 | 回転中心や地震力による破損リスクの確認 |
これらの要素を踏まえて、橋梁に適切な支承を決めなくてはいけません。
状況に合っていないものだと橋梁全体の耐久性も下がってしまうため、支承それぞれの違いを理解するのは重要なのです。
支承の判別(見分け方)

現地調査や点検で支承の種類を見分けるには、その見た目から特徴をチェックし判別することになります。
材料による分類は単純で、ゴム製か鋼製かで判断できます。構造とタイプの見分け方について紹介しましょう。
構造の見分け方
固定・可動・免震の各支承は、以下の特徴を元に判別できます。
種類 | 見た目の特徴 | 機能 |
---|---|---|
固定支承 | ボルトでがっちりと基礎に固定され、滑り部がない | 水平力を許容しない |
可動支承 | ローラーやサイドブロックの遊間があり、水平方向に余裕がある | 水平変位を許容し、温度変化や地震に対応 |
免震支承 | 厚みのある積層ゴムや外装カバーがあり、鉛芯や高減衰ゴムが内蔵されていることが多い | 水平変位を許容しつつ、地震エネルギーを吸収・減衰する |
なお、固定支承と可動支承は、どちらにも鋼製とゴム製があります。
また、免震支承にもすべり板を使用したケースがあるので、見た目よりも機能に注目すると判別がしやすいです。
タイプの見分け方
対象の支承がどのレベルの地震動に対応できるのか、見た目だけで判別するのはかなり難しいです。
免震支承であれば、地震に対応できるのでタイプBに相当します。ですが、ゴム材を使用していてもタイプAの場合もあるので、設計図面や施工記録をチェックして判別しなくてはいけません。
以上です。今回は支承の種類について紹介しました。