埋設型の伸縮装置は、他のジョイントと違って道路上からは姿が見えません。路面に埋め込んでいるため道路と一体化しており、騒音や振動がほとんど起きないのが特徴です。
また、メンテナンスも比較的簡単で、長期的にはコストがかなり削減できます。そのため、現在は小規模・中規模の橋梁で設置されることも多くなりました。
この記事では、埋設型の伸縮装置の特徴やメリットを解説します。製造しているメーカーも合わせて紹介するので、概要はすべて押さえることができます。
埋設型の伸縮装置の特徴
伸縮装置は材質ごとに3つの種類に分けることができます。以下はそれぞれを比較した表です。
種類 | 主な特徴 |
---|---|
鋼材伸縮装置 | 鋼材で構成されたジョイント。 伸縮量が大きいので主に大型の橋に設置される。 |
ゴム材伸縮装置 | 主にゴム材で構成されたジョイント。 輪荷重を支えられないので小型の橋に設置される。 |
埋設型伸縮装置 | 特殊な舗装材で構成されたジョイント。 小・中規模の橋に設置される。 |
埋設型は、アスファルトに似た形状の特殊な弾性舗装材を使って作られた伸縮装置です。そのため、外見はアスファルトと舗装材の色の違いくらいしかわかりません。
ちなみに、鋼材やゴム材の装置の場合、見た目は次のようになります。
上記の装置は、鋼材とゴム材がそれぞれ伸縮をして橋の伸び縮みに対応します。埋設型は、使用している舗装材がその代わりを担っている仕組みです。
埋設型伸縮装置4つのメリット
埋設型伸縮装置のメリットは次の4つがあります。
- 騒音や振動がほとんどない
- スリップが起きにくい
- 止水性が高い
- メンテナンスが簡単でコストも安い
騒音や振動がほとんどない
伸縮装置の上を車が通過する際、段差の影響で車両に振動が伝わります。
しかし、埋設型は前後のアスファルトと似た舗装材です。そのため、路面に同じ轍(わだち)ができ、境界線上に段差がほぼなくなるので振動や騒音が起きにくくなります。
スリップが起きにくい
鋼材の装置だと車両が滑ってしまう可能性が高いです。ですが、埋設型はアスファルトと同程度の抵抗があるので、その可能性はかなり低くなります。
伸縮装置は、道路の横断方向だけではなく、進行方向(縦目地)にも設置します。その場合はスリップへの対策が重要ですが、埋設型は縦目地に効果の高い装置と言えます。
止水性が高い
伸縮装置から水が流れ込むと、橋の劣化が早まります。そのため、漏水の対策が重要ですが、埋設型で使われる舗装材は空隙が少ないため水を通しにくいです。
また、埋設型は前後左右の路面とほぼ同じ特殊な舗装材を使います。鋼材やゴム材だと、部材とのつながりの部分(セクション)から水が流れやすいですが、埋設型はその心配がありません。
メンテナンスが簡単でコストも安い
装置を設置したあとの定期的なチェックはとても重要です。必要に応じて補修も行いますが、埋設型はあまり手がかからないため、長期的なコストがとても安くなります。
埋設型で使う舗装材は、前後の素材とほぼ一緒です。そのため、メンテナンスの周期が道路の修繕時期と同じで、上部の弾性舗装材を打ち替えるだけで済みます。
埋設型伸縮装置の施工について
埋設型の伸縮装置は2つのタイプがあり、その種類ごとに施工方法も異なります。分類としては次の2つです。
- 床版箱抜型
- 舗装厚内型
床版箱抜型
橋脚の床材の上部を箱の形にくり抜き、そこに埋設型の装置を設置する方法です。床を取り除くため施工の手間が多く、床板にある鉄筋等を傷つける可能性もあります。
設置後は装置をアンカーで固定します。そのため、橋の伸縮が特殊舗装材に伝わり、定着性が高いのが特徴です。
舗装厚内型
表面のアスファルトを取り除き、その部分に装置を設置する方法です。床材を取り除かないので、損傷のリスクがほとんどありません。
また、施工の時間も短いため、交通規制の短縮が可能です。
埋設型伸縮装置の種類を紹介
埋設型は各メーカーでそれぞれ製造されていますが、それぞれに見た目や特徴が異なります。3つの製品をピックアップして紹介しましょう。
MMジョイント
舗装材として付着性と伸縮性に優れた合材を使っているため、ジョイント部からの漏水を防止できるのが特徴です。
実物大供試体試験(NEXCO試験437)を行い、約15年程度の耐久性があることが確認されています。
PAジョイント
伸縮性が非常に高く、360度どの方向でも伸縮に耐えられるため、どんな形でも設置できるのが特徴です。
また、実際にゴム車輪を使って行うホイールトラッキング試験では、60,000回転以上も耐えるというとても高い強度もあります。
インナージョイント
特殊な合材と、その間に伸縮性のあるメッシュを敷いており、橋桁の伸び縮みを均等に分散・吸収できるのが特徴です。
特殊合材は周囲のアスファルトとしっかり密着し、弾性シール材で目地部分も覆うので漏水の心配もありません。
以上です。この他にも、各社で様々な埋設型の装置がありますので、以下のページを参考にご覧ください。