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伸縮装置に段差ができる原因は?【見分け方と補修方法を解説】

段差ができた後打ちコンクリート

伸縮装置に段差ができる主な原因は、舗装のわだち掘れ、後打ち材の損傷、伸縮装置本体の変形、支承や下部工の異常などです。見た目は同じ段差でも、原因は路面表面から橋の構造まで及びます。

段差修正材で表面だけを平らにしても、支承の沈下や装置本体の損傷が残っていれば段差は再発します。そのため、補修方法を決める前にどこが下がったのか、なぜ高さが変わったのかを調べることが重要です。

この記事では、伸縮装置に段差ができる原因、見え方から原因を絞る確認ポイント、原因別の補修方法を解説します。最後まで読めば、段差修正材で対応できるケースと、橋の構造まで調べるべきケースを判断する考え方が押さえられます。

伸縮装置に段差ができる主な原因

伸縮装置の段差は、次の5つの原因に分けると理解しやすくなります。ポイントは、装置の周囲だけを見るのではなく、橋全体の変化まで視野に入れることです。

  1. 舗装のわだち掘れ・摩耗と取替時の高さの不一致
  2. 後打ち材のひび割れや欠損、沈下
  3. 伸縮装置本体の変形や欠損、沈下
  4. 支承や桁、床版の損傷や変位
  5. 橋台背面や下部工の沈下や移動

それぞれ、段差ができる仕組みと現地で見つけやすい変化を解説します。

舗装のわだち掘れ・摩耗と取替時の高さの不一致

車輪が通る位置の舗装がすり減ると、伸縮装置や後打ち材だけが相対的に高く残ります。タイヤの通過する位置に沿って舗装が低くなっている場合は、わだち掘れや摩耗の可能性が高いです。

また、伸縮装置の取替時には、装置を橋面の横断勾配(横方向の傾斜)に合わせて据え付けます。

既設舗装にわだち掘れがあると、計画した据付高さと現在の舗装高さが一致せず、取替後に高低差が残ることがあります。

使われ始めて少しずつ大きくなった段差は舗装の摩耗や流動、取替直後から横断方向にばらつく段差は据付高さとの不一致を確認すると、原因を絞りやすくなります。

後打ち材のひび割れ・欠損・沈下

後打ち材とは、伸縮装置を橋に固定するため、本体の周囲へ施工するコンクリートや樹脂モルタルなどの材料です。車輪の衝撃を繰り返し受けるため、ひび割れや浮き、欠損が起こることがあります。

後打ち材の下に空洞ができたり、アンカー周辺が傷んだりすると、車両通過時に後打ち材が沈み、局部的な段差やガタつきが生じます。

舗装との境界に隙間がある、ひび割れが連続する、通過時に音が出る場合は注意が必要です。

わだち掘れと後打ち材の損傷(イメージ)

伸縮装置本体の変形・欠損・沈下

フェイスプレートやゴム、荷重支持部などが変形・欠損すると、装置の上部に直接段差ができます。装置の一部だけが下がる、鋼板が浮く、ゴムが欠けるといった状態が手掛かりです。

固定部の緩みや後打ち材内部の損傷によって、装置全体が沈下・傾斜する場合もあります。その段差は表面をすりつけるだけでは解消できないため、本体と固定部の状態を確認する必要があります。

支承・桁・床版の損傷や変位

支承の破損や沈下によって橋桁の位置が変わると、桁側の路面全体が低くなります。床版端部の損傷や桁の変形でも、伸縮装置付近に段差や遊間の異常が現れることがあります。

橋の幅方向で高さがそろわない、桁側全体が下がっている、遊間にも異常がある場合は、路面だけでなく支承・桁・床版を確認します。

支承については次の記事で解説していますのでご覧ください。

≫支承とは?【役割や構造、現在までの歴史について解説】

橋台背面・下部工の沈下や移動

橋台背面の盛土や取付道路が沈下すると、橋の出入口付近が広い範囲で低くなります。また、橋台・橋脚などの下部工が沈下や移動、傾斜して伸縮装置に段差が現れる場合もあります。

この場合、段差修正材で路面を平らにしても沈下が進めば再発します。

段差の範囲が広いときや補修後に再発したときは、橋台背面や下部工まで調査することが重要です。

段差の原因を調べるときの確認ポイント

段差の原因を調べるときは、次の3段階で確認します。

  • 段差の位置・高さ・広がり方を確認する
  • 周囲のひび割れ・隙間・変形を確認する
  • 支承・遊間・桁・橋台背面まで確認する

まず、段差が車輪の通過位置だけにあるのか、橋の幅全体にあるのかを確認します。

縦断方向と横断方向で高さを測り、過去の点検記録や補修履歴と比べると、局部的な摩耗か橋全体の変位かを判断しやすくなります。

次に、後打ち材のひび割れや浮き、舗装との隙間、装置本体の変形、通過時の異音を確認します。段差の近くに複数の変形がある場合は、同じ原因から連続して損傷している可能性があります。

遊間にも異常がある場合は、次の記事をご覧ください。

≫伸縮装置のある遊間に異常がある場合の原因と対策

最後に、桁下から支承、桁端部、床版端部を確認し、橋台背面や下部工の沈下・移動も調べます。伸縮装置以外の部材が原因であれば、その部材を直さない限り段差修正を繰り返すことになります。

伸縮装置の段差を原因別に補修する方法

伸縮装置の段差は、原因に応じて次の3つの方法で補修します。

  • 舗装・後打ち材を補修する
  • 伸縮装置本体を取り替える
  • 支承・下部工など原因部材を補修する

舗装・後打ち材を補修する

舗装の摩耗やわだち掘れが原因なら、範囲と深さに応じて段差修正材によるすりつけ、舗装の切削・打換えを行います。広い範囲が変形している場合は、局部的に埋めるだけでは平坦性を保ちにくいためです。

後打ち材にひび割れや浮き、欠損がある場合は、傷んだ部分を撤去して健全な下地を確認してから打ち換えます。空洞やアンカー周辺の損傷を残したまま表面だけを補修すると、早期に再損傷するおそれがあります。

段差修正材は短時間で施工しやすい一方、恒久的な対策とは限りません。わだち掘れが進んでいる場合は、舗装打換えの範囲や時期まで含めて計画します。

伸縮装置本体を取り替える

装置本体が変形・欠損・沈下している場合は、損傷程度を確認し、部分補修または取替を検討します。輪荷重を支える部材や固定部に異常がある場合は、段差修正材だけでは安全性を回復できません。

取替時は、既設舗装のわだち掘れと橋面の横断勾配を確認し、装置の据付高さと舗装補修を一体で計画します。伸縮装置の取替手順は次の記事で解説しています。

≫伸縮装置の取替【工事の手順と3つの注意点を解説】

支承・下部工など原因部材を補修する

支承の沈下、桁・床版の損傷、下部工の移動などが原因の場合、その部材の補修・補強を伸縮装置の補修と合わせて行います。路面だけを平らにすると、構造側の変位が続いて段差や遊間異常が再発するためです。

補修範囲は伸縮装置だけに留めず、点検結果と変位の状況から決めます。必要に応じて支承補修、桁の位置修正、橋台背面や舗装の補修を同時に行います。

原因となる部材を残したまま、段差だけを直さないことが再発防止の要点です。

段差修正材で補修できるケースとできないケース

段差修正材は、既設路面との小さな高低差をなだらかにする材料です。ただし、すべての段差を段差修正材だけで補修できるわけではありません。

  • 下地が健全で、軽度な高低差だけが残っている場合は補修できる
  • 後打ち材や装置本体が動く場合は、段差修正材だけでは補修できない
  • 支承・桁・下部工に異常がある場合は、原因部材の補修が必要になる

段差修正材を使う前に、下地が動いていないことと、段差が構造部材の変位によるものではないことを確認します。

補修材が短期間で割れる、剥がれる、同じ位置で段差が再発する場合は、原因調査をやり直す必要があります。

段差の見え方と疑われる原因【早見表】

伸縮装置の段差がある場合に、見え方と周辺の変化から疑われる原因を整理しました。現地調査で確認する範囲を決めるための目安として使用してください。

段差の見え方・周辺の変状疑われる主な原因確認する場所
車輪が通る位置の舗装だけが低い舗装のわだち掘れ・摩耗舗装面、横断形状、施工履歴
後打ち材にひび割れ・欠損・浮きがある後打ち材の損傷・沈下後打ち材、舗装との境界、アンカー周辺
装置本体が曲がる・欠ける・傾く伸縮装置本体・支持部の損傷フェイスプレート、ゴム、支持部、固定部
桁側の路面がまとまって低い支承・桁・床版の損傷や変位支承、桁端部、床版端部、遊間
橋台側の道路が広い範囲で沈む橋台背面・取付道路の沈下踏掛版、盛土、橋台背面、排水
取替直後から横断方向で高さが合わない既設舗装のわだちと据付高さの不一致横断勾配、舗装高さ、施工記録
補修しても同じ場所に段差が再発する原因未除去・下地や構造部材の変状過去の補修範囲を含む橋全体

早見表は、あくまで現地で原因を絞り込むための目安です。最終的には段差の測定や桁下からの確認などを行って、道路管理者が補修方法を判断します。

補修しても同じ場所に段差が発生する場合は、補修材を選定する前に、支承や桁、下部工などに原因がないかを確認することが大切です。

なお、伸縮装置の点検と補修の全体像は、以下の記事で解説していますのでご覧ください。

≫伸縮装置の補修方法|点検の種類と判定内容について解説