橋の途中を支える部分のこと。

橋脚とは橋の途中に設置される重要な支柱であり、橋梁の両端に位置する橋台とともに上部構造を支え荷重を地盤へと伝える役割を担います。
別名、ピアとも呼びます。
橋は道路となる上部構造と、構造物全体を支える下部構造の二重構造で成り立つ巨大建造物であり、橋の“足”の強さが確かなものでなければ道路として使う事はできません。
普段何気なく見る橋脚に秘められた精巧な技術に触れ、建設の面白さに迫ります。
橋脚の基本機能

橋は構造物全体の重さを地盤で支える建築方式が採用されており、その荷重は橋脚を通して地面へと伝わります。
また、橋の下部構造は上からの重量に耐えるだけでなく、地盤内の土圧を支えるものとして強圧に対する設計が緻密に組まれており、構造物自体にかかる垂直力の他、流水圧や風圧、地震荷重といった外部の圧力にも抗する必要があります。
別名ピアとも称される橋脚ですが、設置場所は川の中や海中、土中が多く、実は見る機会が少ない縁の下の力持ち的な存在でもあります。
橋脚の種類
橋は、建設地域の自然環境や景観に合わせた形で細密な設計が行われます。
例えば「美しすぎる橋」として国内外で有名な山口県の角島大橋では、途中曲線を採用した橋梁の設計がなされており、コバルトブルーに輝く海と、建造物との調和を図った架設工法が取られています。
全国にある架橋の種類は多様にあり、それにともない橋脚の姿も異なりを見せます。
これから紹介する3種類の橋脚は、多くの架橋で採用される構造形状であり、その名称と性能について知識を深めていきます。
壁式橋脚

壁式橋脚は、幅員方向に対し垂直に設置され、道路幅員の広い橋梁に用いられることが多い支柱です。
河川では断面の形状は小判型が採用されます。
一般的な橋脚であり、フーチングと呼ばれる構造を介して、輪荷重や橋自体の重さを地盤に伝える役目を担います。
フーチングとは基礎の一部であり、躯体にかかる負荷を分散させるために欠かせない工法です。
ラーメン式橋脚

ラーメン式橋脚は、上部構造が15メートル以上の大橋で採用されます。
主桁と2本の柱を上下部一体化した形状であり、見た目はまるで門のように見えます。
ラーメンとはドイツ語で“骨組み”を表す単語であり、この剛結構造は高架橋や山間部の橋で度々採用されます。
門型という形状を活かし、橋下に道路を通すなど有効に空間利用ができるところも利点です。
張出し式橋脚

張出し式橋脚は、多くの架橋に採用される最も一般的な橋脚であり、別名をT型橋脚とも呼びます。
道路幅員に対し垂直方向に梁が設置され、躯体とフーチングを介して上部構造の荷重を地盤へと伝えます。
断面は短形断面と円形断面があり、曲率が入る曲線橋では度々円形断面が採用されます。
橋脚形状の選定方法
橋脚の選定は、建設現場の自然環境や地盤条件、水深、その他土地の景観を鑑みつつ、総合的な判断のもと行われます。
前述の角島大橋では、日本海に位置するために塩害や波圧、季節風など様々な角度から安全性が求められます。
冬季の厳しい環境に耐えるため、上部構造と下部構造で異なる架設工法を用い、遮塩効果のある化合物を塗布するなど一般的な橋梁とは異なる施工法が採用されました。
このように土地の特徴を見極め、橋の規模や上部構造との兼ね合いを緻密に計算することで適切な橋脚の選定が行われています。また、河川内など水中に建設される橋脚の形状は、“河川管理施設等構造令”に基づき、定められた規定(方向・形状など)を守り設計が進められます。
身近で行われる橋脚の耐震補強工法
地震大国である日本では、有事の際に落橋する大事故が過去に何度もありました。橋が耐震性を保つために身近なところで行われる2つの“耐震補強工法”についてご紹介します。
鉄筋コンクリート巻き立て工法
橋脚のまわりを鉄筋コンクリートで巻き立てる事により、靭性(物が破壊される際に抵抗する性質)やせん断耐力を高める工法です。
維持管理がしやすくコストを抑えられる点が特徴です。
合板巻き立て工法
橋脚のまわりを合板で巻き立て、隙間に充填材を埋め込むことで靭性や曲げ耐力を高める工法です。
橋梁断面の増加を抑えられることから、側方余裕幅が小さい橋脚に採用されます。
伸縮装置との関係
伸縮装置との関係はどうでしょうか。
橋脚のあるところの真上には、伸縮装置が設置されているケースが多いです。
橋台+橋脚の数が伸縮装置の箇所数ということですね。
もっとも、橋脚を跨ぐような連続桁や、橋脚の位置と伸縮装置の位置がずれるゲルバー橋である場合はこの限りではありません。
そして、橋脚があるところには支承があります。
支承の項でも触れている通り、伸縮装置の選定に当たって行う簡易計算に、支承のタイプというのが大きく関わります。
万が一伸縮装置から漏水してしまったときには、そこに設置されている支承、また橋脚そのものにもダメージがあります。

橋脚のタイプが何か、ということは伸縮装置にはあまり関わりがありませんが、常に近くに存在する仲間であることには違いありません。
まとめ
橋梁構造を下支えする橋脚は、想像を超える圧力に耐えうる強度を持ち、また施工現場の自然環境により建設工法や柱の形状を変える必要があることがわかりました。
普段何気なく通る架橋ですが、安全性と機能性を備えたこの構造物には、日本の技術と技術者の計算が細密に組まれ、私たちの暮らしを支えています。
日本の橋を支える“足”は確かに強靭であり、耐震補強工事によりその寿命を長く保っています。