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ゴム支承とは?【特徴や機能、各種類や課題を解説】

ゴム支承とは、ゴムと鋼板を組み合わせた支承を指します。鋼だけでできた支承と異なり、耐震・免震性能が高く、地震の多い日本ではとても重要な機構のひとつです。

ゴム支承は様々な種類がありますが、それぞれに特徴が違います。例えばパッド型はシンプルな構造なので小規模な橋梁に使われており、免震型は高い機能性から大規模な橋梁に多いです。

この記事では、ゴム支承の特徴や種類について解説しました。また、ゴム支承の課題もまとめましたので、概要はすべて把握できます。

ゴム支承の特徴

ゴム支承はゴムを使用することで、鋼製支承にはない様々な特徴を有しています。具体的には次の通りです。

ゴム支承の主な特徴
  • 大きな変形に対応できる
  • あらゆる方向に水平移動できる
  • 弾性により衝撃(地震力等)を緩衝して伝達できる
  • 特定支承に荷重が集中する各個撃破が起きにくい

これらはすべて、免震性能に関わってくるものです。ゴム支承は平成7年の阪神・淡路大震災をきっかけに注目され、それまでの鋼製中心から少しずつゴム支承へと切り替わったという歴史があります。

そのため、使用される支承の多くはゴム支承となっており、現在も免震性・耐震性を向上させるための改良が日々なされています。

ゴム支承の機能

支承の主な役割は、荷重伝達機能と水平移動機能、回転機能の3つです。しかし、これは支承すべてに言える基本的なもので、ゴム支承にはさらに以下2つの機能が期待されています。

  • アイソレート機能
  • 減衰機能

アイソレート機能とは、橋梁の上部と下部を切り離して、水平方向への変位等を伝えにくくする能力です。減衰機能は、地震のエネルギーを吸収して力を低減させる能力を指します。

ゴム支承は単体でこの2つの機能まで備えていますが、鋼性は単体では難しいです。そのため、他の機構と併用して対応することが求められます。

ゴム支承の種類とそれぞれの特徴

ゴム支承のゴムは1枚ではなく、何層にも重ねた積層ゴムを使用しています。これは、上からの荷重による鉛直変位を少なくすることが目的です。

また、ゴム支承には構造が様々あり、具体的には以下4つに分けることができます。

ゴム支承の種類
  • パッド型
  • 固定・可動型
  • 分散型
  • 免震型

パッド型

KGSパッド(鉄道橋用パッド型支承)
引用:KGSパッド(鉄道橋用パッド型支承)|東京ファブリック工業株式会社

パッド型は積層ゴムだけで支持するシンプルな構造です。基本的には沓座(しゅうざ)と呼ばれる支承の台座にそのまま設置し、ボルト等で固定もしません。

移動量の少ない小規模な橋梁に用いられるケースが多いです。

固定・可動型

固定型と可動型は、それぞれで基本的な役割が異なります。固定型は地震などの水平力を支持し、可動式は橋梁の伸縮に対応するのが役割です。

固定型の構造は、鋼製のブロック等で移動しないようにされています。対して可動型はブロック等で固定せず、ゴムの上面が滑るなどして変位に対応できる構造です。

分散型

分散型は上部構造を支えると共に、並行で逆向きに働くせん断力に対してゴム弾性で対応する仕組みです。これにより地震などの水平力を分散させて、下部構造全体で対応します。

なお、ゴム支承で使用されるゴムは、NR(天然ゴム)とCR(クロロピレンゴム)の2種です。

分散型では、機械的強度が高いとされるNRが一般的に使われています。

免震型

免震型は2種類あり、ひとつは鉛の棒(鉛プラグ)を入れた積層ゴム、もうひとつは高減衰ゴムを使ったものです。どちらも減衰機能を目的としており、地震力を低減させることができます。

加えて、ゴム弾性でせん断力に対応し、アイソレート機能を備えることで機能を高めています。なお、免震型は地震に強いので、大型の橋梁に使用されるのが一般的です。

ゴム支承の課題

ゴム支承の損傷
引用:「支承の損傷」研究資料|国土技術政策総合研究所

耐震性の高いゴム支承は、地震の多い日本にとってとても優れた機能です。しかし、鋼製と比べてすべて優れているわけではなく、大きく以下2つの課題もあります。

  • LCC(ライフサイクルコスト)
  • ゴム特有の欠点

例えば、ゴム支承は性能が良い分、製造コストも比較的高いです。加えて、廃棄する場合は鋼とゴムを分離して処分するなどの手間もあるので、LCCが高くなります。

また、活荷重によってゴムが常時振動したり、土圧で橋台等が動いてゴム支承が斜めに変形する事例もあります。さらには、寒冷地ではオゾンによるゴムの劣化で、性能が大幅に低下するケースもあるのです。

以上、ゴム支承について解説しました。